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Published 26 August 2015

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タイ政府、押収象牙2tを粉砕

 タイ政府は8月26日、WWFタイとフリーランド(Freeland)の厳重な監査を経て、2tあまりの押収象牙を粉砕した。


Prayut Chan-O-Cha(プラユット・ジャンオーチャー)首相は、このイベントの演説で、今回粉砕に至るまでの経緯におけるトラフィックの支援について言及した。粉砕は、同国が違法な象牙取引に立ち向かう政策の一部として象牙市場の改革を進める最中に実施された。毎年3万頭近いゾウが象牙目的で密猟されており、それらの主な仕向け地はタイを含むアジア市場となっている。

 粉砕された象牙は、タイ税関と国立公園・野生生物・植物保全局(the National Parks, Wildlife and Plant Conservation Department)の保管在庫で、既に完了した刑事事件で押収されたものだった。いくつかの象牙のサンプルは、その出所を究明するための法医学分析用に保持された。

 「タイは、アフリカのゾウの密猟を煽り、組織的犯罪者たちの懐を満たしている違法な象牙取引を終わらせるための世界的な取り組みに、全力で従事している」と、トラフィックでゾウの問題のリードをとるTom Milliken(トム・ミリケン)は語る。

 「タイの象牙市場を定期的にモニタリングしている唯一のNGOとして、トラフィックは、取引の究極要因である市場価格および需要に対し、このイベントが与える影響を調べるのに適した立場にある」。

 2013年、タイは、国内の象牙市場を閉鎖するか、さもなくばワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の下、取引の制裁措置を受けるという強烈な国際的圧力にさらされた。

 タイ政府は、「国内象牙行動計画」を策定し、2015年1月には、歴史上重要な象牙に関する法を可決させるなどの対応をした。この法律は、家畜化され、個人が所有するアジアゾウ由来の象牙における既存の合法市場の規制を目的とし、それらの象牙の登録を所有者と業者に科している。今年のはじめに、220tあまりの象牙が、4万4,000以上の一般市民から登録された。この数字は、事情に詳しい専門家でさえ驚くものだった。

 タイ政府はさらに、既存の国内法である野生生物保存・保護法(Wild Animal Reservation and Protection Act)を改正し、アフリカゾウをタイ国内における保護種とすることで、アフリカゾウの象牙の販売を禁じるに至った。

 これまでの象牙市場の改革は、非常に歓迎されており、2015年4月の導入時には象牙販売量の即時の低下につながった。しかし一方で、これらの新しい法律が十分に実施され、施行されることを保障するためには、必要なステップがまだいくつかある。

 「現在、象牙店が再び営業を開始しているが、陳列されている製品は、マーキングシステムに反映されているようには見えない。こうした状況では、象牙管理システムが、違法な象牙のロンダリングを効果的に防ぐことができるのかどうか疑問視しなければならない」と、ミリケンは述べる。

 象牙の合法取引のため新設している登録制度の細部には、まだ最終調整が必要である。具体的な事項としては、新制度における合法象牙および小売業者の追跡方法、発行される販売証明書の機能、市場検査手順の策定、不遵守に対する罰則の設定、システムの有効性の監視方法の決定が含まれる。もうひとつの重要な問題は、象牙のオンライン取引の規制方法である。

 「象牙のオンライン市場を取り締まることは、重大な執行上の課題を浮き彫りにする。最善の解決策は、タイにおいてインターネット上での象牙の販売を禁止することである」と、ミリケンは述べる。

 トラフィックは、2012年にガボンでおこなった象牙在庫焼却の監査の際に構築した手法を用いて、象牙監査プロセスについてのガイダンスを提供した。