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Published 26 October 2012

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トラフィックと企業間電子商取引サイトが協力 フィリピン産ウナギ稚魚の違法な輸出を防ぐ

【中国、北京発 2012年10月26日】

 野生生物の取引監視ネットワークであるトラフィックと、世界規模のオンライン企業間取引(B2B)の電子商取引サイト"アリババ・ドットコム(Alibaba.com)"は、過剰な漁獲によりフィリピンの野生ウナギ資源が脅かされているとの懸念から、同国からの幼体のウナギの違法な輸出に対抗するため協力して戦っている。


  ウナギ資源の過剰な利用が後をたたないため、2012年5月にフィリピン政府はウナギの稚魚の商業目的での輸出禁止を導入した。

  近年の日本と台湾でのニホンウナギAnguilla japonicaの漁獲の大幅な減少とヨーロッパウナギA. anguillaの取引制限の結果、アジアの養殖場に供給する幼体のウナギ「養殖用の稚魚うなぎ」の新しい供給源への需要は高まっている。

  2007年、過剰利用から保護するため、ヨーロッパウナギはワシントン条約の附属書Ⅱに掲載された。また2010年、EUは全てのヨーロッパウナギ製品の輸出入を一時停止した。

  それを受けて、需要を満たすため東アジアの主要なウナギ消費市場は他の地域に目を向け始めており、ニホンウナギとルソン島北部海域のみで知られる新種のアンギラ・ルゾネンシスAnguilla luzonensisの重要な新しい供給源として、フィリピンが急浮上した。

  フィリピン政府による輸出禁止後も、幼体のウナギは同国から引き続き違法で取引されている。2012年9月、ニノイ・アキノ国際空港で台湾向け養殖用の稚魚ウナギ13箱が差し押さえられ、7月には香港行きの航空便で949gの密輸が見つかった。

  7月のトラフィックの調査では、B2B電子商取引サイト"アリババ・ドットコム"で50件ものフィリピン産の販売用の稚魚ウナギ/シラスウナギの掲載が見つかった。複数種で数百キロのシラスウナギを毎月供給できる業者もいくつか報告された。

  トラフィックが"アリババ・ドットコム"に違法な輸出の疑いを伝えた後、同社は不正な業者をウエブサイトから削除し、今後フィリピンからの稚魚ウナギの取引が載らないようにすることに同意した。

  「ワシントン条約や地域の法律や規制で保護される全ての動物やその一部を"アリババ・ドットコム"で販売用に掲載することは、社の掲載基準で厳重に禁止されている」とアリババグループの国際業務部門(International Corporate Affairs)副社長のJohn Spelich氏 は言う。

  「サイトの利用者やトラフィックのようなグループが、当サイト上の疑わしい製品の情報を我々に知らせてくれることに感謝する」

  フィリピンでウナギの密輸で有罪になったものは、懲役最長8年と商品の押収または非常に重い罰金などの制裁措置を受けることになる。

  「絶滅のおそれのある固有の野生生物を保護するための努力において、フィリピン捜査当局の助けとなる"アリババ・ドットコム"の協力を、トラフィックは温かく歓迎する」とトラフィックのプログラムオフィサー、ビッキー・クルーク は言う。

  この30年間で世界中の野生のウナギ(ウナギ属)資源は、商業取引のための過剰な漁獲を含む様々な要因により大幅に減少している。多くの野生のウナギの稚魚が漁獲され、養殖用の"種苗"として利用されている。ウナギの商業的生産量の90%以上に寄与しているウナギ養殖では、まだウナギの人工生産が限定的な成功であるため、野生で捕獲される幼体のウナギに依存している。

  1990年以前は、ウナギ養殖はほぼ排他的にその地域の種を利用して行われていた。ヨーロッパウナギはヨーロッパで生産され、ニホンウナギはアジアで生産されていた。しかし、アジアでのウナギ資源の減少と比較的豊富で安いヨーロッパウナギの供給により、1990年代の終わりに多くのアジアのウナギ養殖場が供給元を変更した。

  養殖のために利用されるウナギの稚魚は、「養殖用の稚魚うなぎ(live eel fry)」と呼ばれる。養殖用稚魚は初期の"シラスウナギ"から"クロコ"までのいくつかの成長段階のものを含んでいる。

  アジアとヨーロッパのウナギの供給の縮小とともに、すでに、北米やマダガスカルなどからアジアへのウナギの輸出が報告されている。

  「同じことが繰り返されている。ひとつのウナギ資源が枯渇すると、市場は他所に目を向ける。持続可能な漁業規制がされなければ、世界中のウナギ資源が危機を迎えるのは遠くないだろう」とクルークは言う。