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Published 10 November 2011

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絶滅のおそれのある種のレッドリスト改定により過剰利用の脅威が浮き彫りに

【スイス、グラン発、2011年11月10日】
 世界中の絶滅のおそれのある動植物種をリストにした、IUCN(国際自然保護連合)の「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」が最新版にアップデートされた。IUCNがまとめているこのリストによって、多くの動植物種のさまざまな運命が明らかになる。


新しいレッドリストからは、驚くことにマダガスカルの陸生爬虫類の40%が、このTarzan's Chameleonのように絶滅の脅威にさらされていることがわかる。 ©Jörn Köhler

「このアップデートによって、世界中の多くの種に関するよい知らせと悪い知らせの両方をもたらすこととなる」とIUCNのグローバル種プログラム(Global Species Programme)のディレクター、ジェーン・スマート氏は言う。

「保全は、時期を逃さずに実施されればうまくいくと私たちは知っているが、ターゲットに合わせた努力とリソースと強い政治的意志がなければ、自然の驚異やそれがもたらす(生態系)サービスが永遠に失われてしまう。」

 改定されたリストから、驚くことにマダガスカルの陸生爬虫類の40%が脅威にさらされていることがわかる。トラフィックは、絶滅のおそれのある、マダガスカルに生息する多くの爬虫類種の違法取引が横行していることについて注意を促してきた。こうした状況に対処しない限り、Tarzan's Chameleon Calumma tarzanやBizarre-nosed Chameleon Calumma hafahafa(訳注:いずれもカルンマカメレオン属の一種)、Limbless Skink Paracontias fasika(訳注:スキンク科の一種)といった種を守っている保護区にいる、素晴らしい生物たちを損なうことになる。

 評価の対象となっている植物種は他と比べても相変わらず少ないものの、過剰採取が原因で危急種(Vulnerable)から絶滅危惧類(Endangered)に引き上げられているTaxus contorta(イチイ属の一種)のように、生育状況は悪化している種がある。イチイ属Taxusに属する野生のイチイ類は、抗ガン剤の生産のためにその樹皮や針葉が採取されている。トラフィックは2007年に、いまだ続くこのイチイ類の持続不可能な取引において、中国が与えている影響について報告している。

 セイシェルのオオミヤシLodoicea maldivica のように減少している種もある。これは、その種(たね)のすべての採集や売買が厳しく規制されているにもかかわらず、それらの種子の仁(じん)を取引する闇市場が存在し大きな影響を与えていると考えられている。オオミヤシは、催淫効果があると考えられていることで知られる。

 世界のマグロ類の種についての評価結果は特に深刻で、8種のマグロ類のうち5種が、絶滅のおそれのあるとされる近絶滅種(Critically Endangered)・危急種・絶滅危惧種か、近危急種(Near Threatened)に分類されている。トラフィックはこれまで絶滅の危機にある数種のマグロ類の過剰漁獲の問題について強調している。

 最近発見された両生類26種については初めて評価がおこなわれた。そこには危急種に分類されたBlessed Poison Frog Ranitomeya benedicta や絶滅危惧種(Endangered)のSummers' Poison Frog Ranitomeya summersi の2種(訳注:いずれもヤドクガエル科の一種)も含まれている。両種共に、生息地の消失とペット向けの国際取引のための捕獲が組み合わさって、危機的状況にさらされている。

 サイの密猟が続いていることは、今回のレッドリスト改定にも影響を与えており、複数亜種の生息状況が悪化していると評価されている。

 トラフィックの事務局長、スティーブン・ブロードは言う。「IUCNレッドリストの評価過程を通じて判明した、世界の野生動植物が直面している脅威にざっと目を通すだけでも、持続可能ではない取引によって引き起こされる問題と、絶滅への大きな引き金となる危険要因が明らかとなる。」